レースレポート:東北風土マラソン2014

■大会ホームページ
http://tohokumarathon.com/

■レース概要
宮城県唯一のフルマラソン大会として、2014年より開始。フランスで行われているメドックマラソンとタイアップした大会として、エイドステーションでは豊富な飲み物や食べ物(=給食所)が用意されている。東日本大震災の復興に向けた取り組みでもあり、復興拠点の1つにもなった登米市の長沼フートピア公園を拠点としたレースである。

■レポート年
2014年


大会ゲート“レース中にワインが飲める”ことでも有名であり、日本からも大勢のランナーが参加する、フランスのメドックマラソン。そのタイアップレースとして2014年に生まれたのが、『東北風土マラソン』だ。2011年3月11日に起きた東日本大震災の復興を1つの目的として、宮城県登米市にて開催された。

その最大の特徴は『給食所』にある。一般的なフルマラソンでは、水やスポーツドリンク、ときに飴玉やバナナなどの軽食がエイドステーションに用意されているだろう。しかしこの東北風土マラソンでは、実にさまざまな地元特産の“食事”が用意されている。さらに水分はスポーツドリンクだけでなく、日本酒の製造に使用される“仕込み水”を使用。どのようなレースなのか、実際に走ってきた。

■宿泊先と移動手段

大会出場に当たり、1つ問題になったことがあった。それが、宿泊先の手配である。特に今回、私は大会開催月である4月に入った段階でエントリーを行った。そもそも登米市周辺に宿泊施設が少ないこともあり、この時点で周辺には宿が見つけられなかったのである。そのとき選択肢として考えたのは、

  1. インターネットにも載っていない旅館などを探し尽くす
  2. 仙台駅周辺に宿泊&バス移動できるツアーに申し込む
  3. レンタカーを借りて少し離れた場所に宿泊する

しかしここで、いきなり3つの選択肢が消えた。なぜならこの東北風土マラソン、同日に東北日本酒フェスティバルというイベントが開催されているのだ。そして完走者には特製枡が配られ、日本酒の利き酒が無料でできるという。しかしレンタカー移動を選択してしまえば、当然ながらお酒を飲むことはできない。これは私に限らず、多くの参加者にとって重要なポイントになるのではないだろうか。

余談だが、私はそんな中で偶然にもレース2週間前にオープンしたホテルを見つけ、無事に宿泊先を手配することができた。恐らく、多くの出場者はすでに宿などの手配を終えていたのだろう。しかし来年以降は、このホテルも早期に満室となる可能性は高いので、注意しておきたい。

宿泊先が決まれば、移動は全く問題にならない。先に挙げたようにレンタカーを借りることもできるが、大会では主要箇所からのシャトルバスが、前日・当日にわたって運航していた。参考まで、私は今回以下のように移動を行った。

<大会前日>

  1. 上野駅から新幹線でくりこま高原駅へ移動
  2. くりこま高原から無料シャトルバスで大会会場へ移動
  3. 受付を完了
  4. ホテルまで徒歩(約5km) ※実際には周回バス有り

<大会当日>

  1. ホテルで朝食の後、登米市役所(ホテルから徒歩4分)から無料シャトルバスで大会会場へ移動
  2. レース本番
  3. 完走後、シャトルバスで瀬峰駅へ移動
  4. 瀬峰駅からJR線にて仙台駅へ移動

シャトルバスは、いずれも思ったより空いていた。家族連れで小さなお子さんがいても、安心できるだろう。とはいえ、出場者数に対して登米市周辺の宿泊施設は少ない。エントリーする際には、あらかじめ手配を行っておいた方が良さそうだ。

■受付

レース参加者には、あらかじめゼッケン等が郵送で配布される。ゼッケンは1枚で、計測用のチップが付いていた。50人毎にウェーブスタートとなるため、このチップで正式なタイム計測および順位決定をするようだ。

受付そのため「受付」と言っても、そこでは参加賞の受け取りを行うのみとなる。受付は前日・当日とも行っているが、走り終えた後でも可能だ。交通手段の関係などで当日到着がギリギリになる場合でも、ゼッケン(チップ付き)さえ着ければ出走できるので慌てずに行動したい。この点は、「事前の受付必須」と思っていた方が多いようだった。

受付は、大会会場である長沼フートピア公園で行われる。シャトルバスや車で訪れた方は、駐車場から少し長沼付近へ公園を下った場所になる。公園には大きな風車や長い滑り台、アスレチック遊具などがあって、たくさんの子供たちが遊んでいた。これなら、受付中に子供を遊ばせておくこともできそうである。個人的にこの公園だけでも、家族で遊びに来たいと思った。

参加賞は、大会TシャツとPhitenのネックレス。この2つは、レース本番で着用している人も多く見られた。協賛企業などのチラシが少なかったのは、荷物が多い遠征ランナーからすると有り難い。

■コースとエイドステーション

コーススタートは長沼フートピア公園内から。たくさんの応援の方々に見送られて、走り出していく。大会ゲートがあるが、スタート地点はその少し先にある“スタート”と書かれた旗の下になる。チップ計測もそこから始まるが、誰もがゲートから走り出していた。確かにあのゲートをくぐると、走ってしまいたくなる。

尚、今回は多くのアンバサダーが大会を盛り上げるべく協力してくださっていた。その中の1人であるサンプラザ中野さんは、代表曲の1つである『ランナー』を、スタートの号砲と共に熱唱。その歌声を背に受けながら、次々と選手たちがコースへ向けて走り出すのだった。

走り始めると、コースは全体的に細かなアップダウンが点在する。しかしフラット部分も多いので、上手くペースコントロールすれば苦にはならないだろう。登り坂も長く続くものではなく、短い坂道がときどき現れるといった感じだ。2km弱で最初のエイドがあり、いきなり名産品の“栗原市のいちご”を食べられる。こちらのいちごは3種類あるとのことで、出来れば全て味わいたい。とても甘くて、以降のエイドステーションに期待が膨らむ。

写真 2014-04-27 9 46 30コースはすべて舗装路。キレイな道路なので走りやすい。途中、約7km地点で砂利道があるが、100m程なので気にはならない。尚、コースは折り返しになっているので、この砂利道は約23km地点でも再び現れる。

コースは景色も自慢の1つのようで、木々に囲まれたコースは心地よい。残念ながら例年より早く満開を迎え終えてしまったという桜も、まだ可愛らしい花を見せてくれた。10kmほど走るとちょうどスタート会場から長沼をはさんで反対側に到達するが、そこから見る長沼の景色も素晴らしかった。ときどき、会場で流れている音楽が聞こえてくるのも面白い。

フルマラソンのコースは、3回の折り返しがある。最初の折り返しは約15km地点。ここでは『油麩丼』と共に、本大会の目玉でもある『仕込み水』による給水があった。仕込み水は、どことなく甘みがあり、あっさりした口当たりのように感じた。

折り返したら、ここから一度、長沼フートピア公園まで戻ることになる。最初は「戻るのはキツイな」と思うが、すぐにその思いはなくなった。なぜなら、ここからお楽しみの“給食所”が満載になるからだ。

給食所で食べることのできるものは、以下の通りだ。

エイドステーション「美味しいですね!」と話すと、「おかわりしてよ!」と勧めてくれるのが嬉しい。お言葉に甘え、たくさん頂いてお腹いっぱい。私は食べながら走るのなど慣れたものだが、そうでない方は食べた後に少し歩く、あるいは食べる量を考えるなど対策が必要かもしれない。

約15km地点で折り返してから、しばらく走ると大勢のランナーが現れる。途中で、ハーフマラソンの出場者と合流するのだ。周囲にランナーが増えるので、なんとなくテンションも上がってくる。人とも多くすれ違うので、声を掛け合うランナーの姿は素晴らしかった。エイドステーションで立ち止まるランナーは多く、いつしかランナー同士が仲良くなれるのも、この大会の楽しさと言えそうだ。実際に私も、レース中に知り合った仮装ランナーと記念写真を撮るなど、新たな繋がりがたくさん出来た。

2度目の折り返しは、長沼フートピア公園直前。ここで、ゼッケンにチェックマーク(マジックで線を引く)を付けてもらう。ハーフマラソンのランナーはそのままゴールに向かうので、少し寂しい。しかし、折り返し地点にはエイドステーションがあり、『ステーキ』が用意されているのだ。ここから残り約12km、再び来た道を戻っていく。

ゴールゲート最後の折り返し地点は約36km。坂道を登り切ったところにある。あとは、再び長沼フートピア公園に戻るだけだ。

すでにランナーは殆どが疲れており、お互いに励まし合うようにして声を掛け合う。何度もすれ違って、顔見知りになっているランナー達もいた。

ゴールはスタートと同じ場所になる。ゴールが近づくに連れて会場から声や音楽が聞こえてくる。また、残り1kmを切った辺りからは遠目にゴールが見えるので、「ゴールだ」と実感できるだろう。

応援は多くない(恐らく、多くの人々は他イベントを楽しんでいる)が、ゴールでは何人ものスタッフが迎えてくれた。中には、ゴール後に声援を送る出場者の姿もあり、人の温かみを感じられるシーンとなった。

■東北日本酒フェスティバル

利き酒ゴールすると、完走賞が渡される。これもまた、まさにこの大会独特。手渡されたのは、日本酒を入れる『枡』と『お米』だった。そしてもう1つ、5枚綴りの『日本酒利き酒券』。この券を提示すると、同時開催されている東北日本酒フェスティバルで好きな日本酒を利き酒できるのだ。

ちなみに私も小一時間ほど(日本酒を2杯飲み終わるまで)気付かなかったのだが、記録証をすぐに発行してもらえる。特にゴール後のアナウンスがないので、見落としている人は少なくなかったようだ。ゴールゲート横のテントが記録証の発行場所になっており、ゼッケン番号を見せて受け取る。せっかく走りきったのだから、忘れずに受け取っておきたい。

日本酒は、実にさまざまな種類があった。開催地である登米市の地酒『澤乃泉』をはじめ、一ノ蔵や出羽桜、南部美人などの有名銘柄など多数。レース中に仕込み水が振る舞われた銘柄を飲んでみるのも良いだろう。小腹が空いたら、別のテントで食べ物も販売されている。

会場内ではステージで様々なイベントが行われていたが、特にご当地キャラは子供たちに大人気。写真を撮りたいという列まで見られた。走っている間、家族や友人など走らない方でも、十分に楽しんで過ごすことができる。

■沿道の応援

ゴールゲートスタート&ゴールである長沼フートピア公園には、ランナーを含めとても多くの人々が訪れている。しかしスタート時こそ大勢がランナーを見に集まるが、全体的に沿道の応援が多いレースではない。恐らく多くの人々は、スタート後に公園内で開催されているイベントに集まっていたのだろう。しかしコース上にある家々では、必ずと言って良いほどに住民の方々が表に出て、ランナーへ声援を送ってくれる。中には、車椅子に乗ったおばあちゃんの姿も。その優しい表情と声に、元気をもらえるはずだ。

また折り返しが多いので、他ランナーと顔をあわせる機会が多いのも、大きな特徴といえるだる。「ファイト!」「頑張りましょう!」「ナイスラン!」と言った声が、コース上の至るところで聞こえてくる。もちろんエイドステーションでは、元気にスタッフの方々が応援の声を投げかけてくれる。地元の人々、そしてランナーとの触れ合いに包まれた、温かさを感じまる大会だ。

■本大会について

長沼フートピア公園この大会は、東日本大震災をキッカケに立ち上がった。その背景や開催に込めた思いを、発起人であり副実行委員長を務める竹川隆司さんに伺ったので、最後にご紹介したい。

もともと、海外で経営者として仕事に取り組んでいた竹川さん。東日本大震災の起きた日は、ニューヨークへ子会社を立ち上げるため東京にいたと言う。しかし海外へ行くと、日本人というだけで多くの人々から「大丈夫か?」と心配の声がかけられたそうだ。

「自分も、日本人として出来ることをしたいと思いました。寄付などだけではなく、地元の役に立つ仕組みづくりをしたいと思ったんです。」
もともとランナーだった竹川さんは、過去に2度メドックマラソンにも出場。すっかりメドックマラソンのファンとなっていた竹川さんは、その魅力が東北にも繋がるのではないかと考えた。

「メドックマラソンは、本大会を含めて世界一楽しいマラソンだと思っています。美しい景色に、美味しいワインと食事。メドックマラソンというとワインが注目されがちですが、ポイントはそれだけでなく、街全体を楽しむカルチャーにあると感じているんです。」

しかしいざ動き出してみると、決して簡単なことではなかったという。警察や消防、市、県、スポンサー、そして地元の食べ物や飲み物など、さまざまな要素を巻き込むことは、思った以上に困難な壁となったのだ。

「経営はシンプルです。社員がいて、クライアントがいて、サプライヤーがいて。そのために仕事をします。しかしマラソン大会の運営は、一筋縄ではいきませんでした。」

最初に悩んだのは、何から手を付ければ良いのかということ。竹川さんはメドックマラソンのプレジデントから日本版としてのお墨付きを得ることで、まずスポンサー獲得を行った。そして、一歩ずつ具体的な取り組みへと進行していったのである。

しかし、なぜ長沼を選んだのだろう。これには、次のように答えてくれた。

「最初から、沿岸部で開催したいという発想はありました。しかしその多くは、道がデコボコであったり、高低差が凄かったりしたんです。あるいは、まだ復興車両の多い地域では、道路を閉鎖して開催することが本当に良いのか、疑問もありました。そんな中、長沼は田園地帯で走りやすく、景色も綺麗です。美味しい食べ物やお酒もあり、この大会にピッタリだと思ったんです。また、実際の開催地である長沼フートピア公園は、震災後に消防や警察の拠点になったという背景があります。つまり長沼は、東北全体にアクセスしやすい場所といえるでしょう。また、震災に縁のある場所だからこそ、本大会の開催地とする意味があるとも考えました。」

運営スタッフ約10名の実行委員や登米市観光物産協会に加え、市の職員やその他周囲の人々によって取り組まれた本大会。協賛企業からの協力を含め、当日は約300名にも及ぶボランティアスタッフが、その運営に当たったという。確かに実際にレースを走っていても、各エイドや分岐点、折り返し地点など、多くのスタッフがいたことが思い返される。

「東北風土マラソンは、リピーターの多い大会にしたいんです。そして出場した方が、今度は友人や家族を連れてきたいと思ってもらえたら最高ですよね。ランナー以外の方に楽しんでもらえるのも、この大会のポイントだと思っています。そのために、マラソンを起点とした複数のイベントを開催も必要です。」

1人の男性の“思い”が周囲を巻き込み、実現したこの東北風土マラソン。私も走り終えて、是非来年も出場したいと感じた。人との触れ合いとマラソン、その双方を思いっきり楽しみたいという人には、お勧めの大会といえるだろう。

トウモロコシ仮装ちなみに今回、私はトウモロコシの仮装で走った。

気温が25度近くまで上がったため暑かったが、多くのランナーやスタッフ、地元の方々から声を掛けて頂き、むしろ楽しさは倍増。大会側としてもファンランで楽しめる大会を目指しており、仮装は大歓迎とのことだ。

その他にも、エヴァンゲリオン初号機やショッカー、クレオパトラ、スパイダーマンなどコスプレランナーが多数出場。ハーフマラソンの部ではクマやタコなど被り物系の仮装ランナーが多く、レース中でも一緒に写真を撮るなど楽しむことが出来た。

エイドステーションで立ち止まりながら、食べ物や自然を楽しめる本大会。人との交流が多いレースだからこそ、こうした楽しみ方もお勧めできる。また是非、トウモロコシを着て出場したい。

■出走者データ

【出走数】1,233名

  • フルマラソン:489名
  • ハーフマラソン:466名
  • キッズ2km:237名
  • キッズ5km:41名
【出走者所在】30都道府県より参加
  • 宮城県:約5割
  • 東北地方:約2割(宮城県除く)
  • 関東圏:約2割
  • その他:約1割(海外含む)

↓大会の様子を、YouTube動画にてご覧頂けます↓