「自分も走ってみることで、夫への理解が生まれた」|岡本 鏡子

マラソンにすっかり魅了されたランナーは、次々とさまざまなレースへ出走していきます。やがてロードレースを走るだけでなく、トレイルランニングやトライアスロンなどといった競技へチャレンジする人も多いでしょう。その活動がエスカレートしていくと、特に家族を持つランナーには1つ問題が起きます。それが、パートナー(=家族)からの理解です。

岡本鏡子

今回取材させて頂いた岡本鏡子さんは、そんないわゆる“魅了されたランナー”を夫に持つうちの1人です。

旦那さんは出会った当初からすでにランナーだったとのこと。程なくしてトライアスロンやウルトラマラソンなど活動がエスカレートし、昨年には沖縄本島1周など数多くの超長距離レースに出場しています。「応援だけのために、同行することはありません」という岡本さんですが、それでも旦那さんは数日家を空けることがあったそうです。

しかし実は、そんな岡本さん自身も、旦那さんと出会ってからトライアスロンに挑戦されたとのこと。フルマラソンやトライアスロンを経験されていました。

そこで今回は女性の視点から、その面白さや環境の変化、旦那さんへの思いなどをお話し頂きました。

■旦那さんとの出会い

旦那さんと出会う3ヶ月ほど前、2011年の夏頃から走り始めたという岡本さん。キッカケは、友達から24時間リレーマラソンに誘われたことだったそうです。

岡本鏡子

「もともとスポーツは苦手で、走ったことなんてありませんでした。だからマネージャーとして参加しようと思ったんですが、せっかくだからと誘われてランナーで登録。家の周りを少し走ってみたら、意外に走れたことに驚きました。」

練習で膝を痛めてしまい、実際の大会では周回2.5kmのコースを1〜2周だけ走ったという岡本さん。しかし、“走れた”という事実に嬉しさを感じ、また走りたいと思ったとのこと。そんな中、知人からの紹介で知り合ったのが、現在の旦那さんでした。

「彼は私なんかよりもっと走っていて、付き合ってすぐ、野辺山のウルトラマラソンにも出場していましたよ。」

どちらかと言えばファンランを楽しむ岡本さんと、どんどん過酷なレースへチャレンジする旦那さん。しかし“走る”という共通の楽しみは、やがて2人の関係をより深めるエッセンスになっていくのでした。

◼︎一緒にトレーニング出来るという楽しみ

岡本鏡子旦那さんはIomare martilloというチームに所属し、トライアスロンにも取り組んでいました。その影響から、岡本さんも程なくしてトライアスロンにも挑戦することになります。

「自転車を見に行ったら、ちょうど良いサイズ、デザインのロードバイクが売っていたんです。気付けば、そのバイクが家にありました(笑)」

2012年春に開催された東京都トライアスロン渡良瀬大会(スプリント・ディスタンス)で、見事にトライアスロンデビューを果たした岡本さん。フルマラソンより先にトライアスロンを完走されたとのことですが、そこには旦那さんの支えがあったようです。

「大井埠頭などでバイクのトレーニングをしたのですが、いつも夫が一緒でした。向こうは経験者ということもあって、『ペースが速い』とか 『もう少しちゃんとサポートしてほしい』など、トレーニング中に喧嘩することもありましたけどね(笑)でも、趣味の時間も共有できるっていうのは、凄く貴重なことですよね。渡良瀬大会の後に出場したトライアスロン珠洲大会では、初めてレースへ一緒に出場しました。」

夫婦揃って、もともとはインドア派。しかしマラソンやトライアスロンがキッカケとなって、2人で休日に外へ出ることが増えたと言います。スポーツには嬉しさや悔しさが伴いますが、そうした思いも夫婦で共有できることは、羨ましいと感じる方が多いのではないでしょうか。

「レース前にトレーニングしていないようだと、つい『大丈夫なの?』とか聞いちゃいますね。」

と、岡本さん。相手のことが理解できるからこそ、日常会話でもレースやトレーニングの話が出るようです。

■やるからには、全力を尽くしてほしい

しかし岡本さんと比べて、やはりレースの出場本数も圧倒的に多い旦那さん。走る距離も長いので、ときには宿泊を伴うレースも少なくない。このことについて、岡本さんはどう考えているのでしょうか。

「レースに出てほしくないとは、思ったことがありません。むしろ、応援する気持ちが強いですね。『出るからには、しっかり完走してよ!』って。」

気持ちのうえでは応援していても、実際にそれを体現するのは、やはり自分自身もその趣味を理解していないと難しいのではないでしょうか。岡本さんは、旦那さんにとって良きサポーターなのかもしれません。

岡本鏡子そんな岡本さんですが、実は6月に初めてのお子さんを出産予定とのこと。現在は仕事も産休に入っています。そしてお子さんを授かったことで、家庭には大きな変化が…

「夫はすっかり目が子どもに向いてしまって、最近はめっきり走らなくなっちゃいました。すっかり子育てモードですよ(笑)それはそれで、嬉しいんですけどね。でも、あまりに子供のことばかりなので、『たまには、走ってもらった方が良いんだけど』なんて思うこともあります。」

初めての出産は、夫婦ともに不安が大きいでしょう。そんな中、旦那さんが趣味より子育てにしっかり目を向けてくれたことは、岡本さんにとっても安心に繋がっているようです。

しかし岡本さん自身、子育てが落ち着けば、またトライアスロンやマラソンは再開したいという思いを持っていました。旦那さんについても、もちろん競技を続けることに賛成です。

「もちろん、これまで通りのペースで大会ばかり出られたら困りますけどね。レースで家を空けるなら、その分を他でフォローしてくれたら良いんです。バランスが大切なんですよ。」

この“バランス”という言葉には少し重みを感じますが、子育てを大切に思える旦那さん、そして共通の趣味として旦那さんを応援できる岡本さんならば、きっと協力し合いながら両方を充実させていけるのだと感じます。

■メッセージ

ランナーの夫を持つ方々に対し、岡本さんからメッセージを頂きました。

岡本夫妻「まずは、少しでも良いから一緒にやってみることをお勧めします。そうすれば、きっと旦那さんのことを理解できますよ。旦那さんがストイックだから、自分までストイックになる必要はありません。きっと、旦那さんがこちらに合わせてくれるはず。私も夫が一緒に走ってくれたり、トレーニングしてくれたりしたから、初心者でもここまで楽しめたのだと思います。」

男性からしても、この意見は貴重でしょう。ただ「一緒にやろうよ」と誘うだけでなく、相手をエスコートしてあげること。パートナーからの理解を得るためには、大切なキーポイントといえそうです。